top of page

[奨励賞] 寺田 百合子 / Kanazawa University

Yuriko Terada, Ph.D., M.D.

[分野:ワシントン大学セントルイス校研究者ネットワーク (ミズーリ)]


論文リンク


論文タイトル

Maintenance of graft tissue-resident Foxp3+ cells is necessary for lung transplant tolerance in mice


掲載雑誌名

The Journal of Clinical Investigation


論文内容

肺移植は末期呼吸不全に対する唯一の根治的治療法である。しかしながら、他の臓器移植に比べて長期生着率は依然として低く、その主因である移植肺の拒絶による機能不全の克服が大きな課題となっている。

これまで我々は、寛容状態にあるマウス肺移植片では、制御性T細胞(Foxp3陽性細胞)が豊富に存在する気管支関連リンパ組織(BALT)が形成され、これらの細胞が局所的および全身的に免疫反応を抑制することを報告してきた。本研究では、肺移植片内の制御性T細胞が、末梢の制御性T細胞とは表現型及び遺伝子発現の両面で異なることを明らかにした。マウス再肺移植モデルを用いた解析により、レシピエント由来の制御性T細胞が、肺移植片のBALTへ継続的に補充されていることを示し、新たに補充された細胞が時間経過とともに常在細胞に類似した遺伝子発現プロファイルを獲得することを確認した。さらに、レシピエント由来の制御性T細胞の補充を阻止すると、抗体性及び細胞性拒絶が生じた。また、IL-33の気道内投与により、肺移植片の制御性T細胞が増加・活性化し、拒絶が抑制された。

これらの結果から、肺移植片内に常在する制御性T細胞が肺移植後の免疫寛容維持に重要な役割を担うことが明らかにした。この結果は、肺移植後の慢性拒絶の克服につながり、肺移植医療の長期成績向上に寄与する可能性を示している。


受賞者のコメント

このたびは、このような栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究は、これまでご指導・ご支援いただいた先生方や共同研究者の皆様のご協力のもとに得られた成果であり、心より感謝申し上げます。


審査員コメント


神尾 敬子先生

本研究は、肺移植における免疫寛容の維持に graft tissue–resident Foxp3⁺ Treg の継続的な補充が不可欠であることを再移植モデルにより明らかにし、臓器特異的免疫制御機構の理解を大きく進展させた成果です。さらに、吸入 IL-33 による局所治療戦略を提示しており、今後の臨床応用に向けた発展性も期待されます。


辻 正樹先生

肺移植におけるFoxp3陽性制御性T細胞(Treg)の役割を詳細に解明した研究である。寛容肺移植片内に形成されるBALTに存在するFoxp3+細胞が、末梢Tregとは表現型・転写プロファイル・クローン構成の点で異なり、継続的にレシピエント由来Tregが動員・分化することで局所寛容が維持されることを示した。さらに、Treg動員阻害により抗体関連拒絶と急性細胞性拒絶が惹起されること、IL-33局所投与が移植片常在Tregを増幅・活性化し得ることを示した。


渡辺 知志先生

肺移植後の免疫寛容機構に着目し、移植片内に存在するFoxp3+制御性T細胞の役割を解析した研究です。レシピエント由来の胸腺Foxp3+細胞の持続的補充が免疫寛容維持に必須であり、その破綻が拒絶反応に直結することが示されています。さらに局所IL-33投与によってFoxp3+細胞を拡大・活性化できる可能性が示され、新たな治療戦略への展開も示唆されています。肺移植成績を左右する拒絶反応に対する理解を大きく前進させるとともに、将来的な臨床応用への発展が期待されます。


1)研究者を目指したきっかけ

日本で肺移植の診療に関わる中で、移植後に起こる拒絶反応の仕組みにはまだ分かっていないことが多いと知りました。「なぜこの反応が起こるのか」を解明できれば、より多くの患者さんを助けられるのではないかと考え、研究に強い興味を持つようになりました。その思いからアメリカに渡り、肺移植における拒絶反応のメカニズムを明らかにする研究に取り組んできました。


2)現在の専門分野に進んだ理由

肺移植は末期呼吸不全患者に対する治療法ですが、拒絶反応によって長期成績に課題があります。臨床の現場でその問題を実感し、「なぜ起こるのか、どうすれば防げるのか」を明らかにしたいと考え、この研究に取り組んでいます。免疫の仕組みを解明することで、将来の新しい治療につながる可能性に大きな魅力とやりがいを感じています。


3)この研究の将来性

本研究により、肺移植後に起こる拒絶反応の仕組みがより詳しく理解されれば、それを抑える新しい治療法の開発につながる可能性があります。これにより、移植した肺をより長く機能させることができ、多くの患者さんの生活の質や予後の改善に貢献できると考えています。

コメント


bottom of page