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[奨励賞] 川内 翔平 / 金沢大学

Shohei Kawachi, Ph.D.

[分野:オーストラリア・ニュージーランド]


論文リンク


論文タイトル

Clinical Features Associated With Fatigue in People With Fibrotic Interstitial Lung Disease: Cross-Sectional Study


掲載雑誌名

Respirology


論文内容

慢性呼吸器疾患である間質性肺疾患の主な症状である疲労に関係する臨床所見は不明である。そのため、間質性肺疾患において疲労に関係する臨床所見を明らかにすることを本研究の目的とした。前向き横断研究として対象は運動時低酸素血症を有する間質性肺疾患患者とした。疲労を従属変数、疲労に関連する臨床所見を独立変数として、単変量解析および多変量解析を実施した。疲労の評価には疲労重症度尺度スコアを用いた。独立変数である疲労に関連する臨床所見は年齢、BMI、疾患重症度、呼吸困難感、身体活動量(1日の平均歩数)、運動時低酸素血症、ステロイド内服の有無、睡眠時無呼吸症候群の有無とした。これら独立変数の選定の妥当性を担保するために有向非巡回グラフを用いた。116名の研究参加者のうち72名(62%)が著しい疲労(疲労重症度尺度スコア≥36点)を有していた。単変量解析では、疲労重症度尺度スコアと運動時低酸素血症(6分間歩行中および日常生活中の最低SpO₂)との間に相関は認められなかった(p>0.05)。多変量回帰分析では、疲労重症度尺度スコアが高いほど、呼吸困難度が高く(標準化β=0.546、p<0.001)、1日の歩数が少ないことが示された(標準化β=−0.188、p=0.02)。したがって間質性肺疾患患者においては、呼吸困難と身体活動量が疲労に関連していることが本研究によって示された。


受賞者のコメント

このたびは、このような賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究は、Monash大学での1年間のポスドク留学中に実施したものであり、国際的な研究環境の中で多くの学びと貴重な経験を得ることができました。本留学にあたり多大なご配慮を賜りました信州大学の藤本先生、山本先生、そして同期の佐藤に心より感謝申し上げます。また、留学中の生活を支えてくれた家族にも深く感謝しております。Monash大学のHolland教授のもとで研究に従事した経験を通じて、自身の研究をどのように発展・展開していくかについて具体的なイメージを持つことができました。間質性肺疾患の疲労に関する研究や歩行時酸素療法に関するスコーピングレビューに加え、多様で挑戦的な研究に携わる機会を得たことで、質の高い研究を行うための視点と情報収集の重要性を改めて実感いたしました。本受賞は、これまでご指導・ご支援いただいたすべての先生方、共同研究者の皆様のおかげであり、改めて深く御礼申し上げます。


審査員コメント


永田 向生先生

間質性肺疾患(fILD)の主な症状は「咳・息切れ・倦怠感」ですが、患者にとって「倦怠感=疲労感」は息切れと同じか、それ以上に辛い症状とされる。COPDなどでは酸素不足が疲れに関係しているが、fILDでも同様かは不明であった。申請者らは安定した状態のfILD患者116名を対象に、疲労度テスト(FSS)を実施して、息切れの強さ(Dyspnoea-12)」と「1日の歩数の少なさ」が相関していることを示した。SpO2との関連は乏しかった。十分な統計的検討がなされていますが、fILDの背景にある関節痛や脊椎疾患の有病率がCOPDとは異なることが予想され、さらなる研究が期待されます。


飯島 弘貴先生

本研究は、慢性線維化間質性肺疾患(fILD)における疲労の要因を臨床データに基づき整理し、呼吸困難や日常活動量との関連を示した点で、分野の基盤的知見を着実に積み重ねた研究です。現段階では横断的解析に基づく観察的研究であり、因果関係の解明や介入効果の検証といった課題は残りますが、本成果を起点として研究デザインや解析を発展させることで、fILD患者の疲労に関する理解がさらに深化していくことが期待されます。


橋田 久美子先生

Thank you for your work. The manuscript was well-written. This study elucidates the relationship between fatigue and clinical features, including oxyhaemoglobin desaturation, in fILDl. Conducting multi-center studies is the necessary infrastructure to ensure quality while increasing sample size and scientific expertise to advance research. This study has a solid and meaningful contribution to the field. Wishing the authors luck as they continue this important line of research.


1)研究者を目指したきっかけ

もともとは、「人と同じではないことをやってみたい」「普通の理学療法士とは少し違う道に進んでみたい」という漠然とした思いがきっかけでした。その中で研究に出会い、「目の前の患者さんや医療者だけでなく、研究を通してより多くの人に貢献できる」という点に魅力を感じるようになりました。


2)現在の専門分野に進んだ理由

現在の研究テーマに進んだきっかけは、学生時代や若手の頃に出会った先生方や講演会でした。特に、呼吸器分野の研究をされている先生との出会いや、呼吸器リハビリテーションが新たに制度として認められた一方で、「まだエビデンスが十分ではない」という話を聞いたことが強く印象に残っています。

この分野は薬物療法だけでなく、理学療法としても研究と臨床の両面から大きく貢献できる点に魅力を感じています。呼吸器疾患の患者さんが抱えるメカニズムが完全に明らかになっていない息苦しさや疲労といった課題に対して、よりよい支援を届けられるよう、研究を通じて臨床に還元していきたいと考えています。


3)この研究の将来性

この研究は、呼吸器の病気を持つ患者さんが感じる「疲れ」に注目し、その原因や関係する要因を明らかにすることを目的としています。これまでの医療では、間質性肺疾患という呼吸器疾患を考える際に、咳や呼吸困難感といった代表的な症状や肺機能などの検査データが重視されることが多く、「なぜこんなに疲れるのか」といった患者さんの疲労感は十分に解明されていない部分がありました。本研究では、身体活動量や呼吸困難といった要素に着目し、これらが日常生活の中での「疲れ」の要因となっている可能性を示しました。

将来的には、この研究によって疲れの背景にある要因が明らかになることで、単に病気を治すだけでなく、「疲れにくく生活できる」ことを目指した医療やリハビリテーションの開発につながる可能性があります。


留学や研究生活にまつわるエピソード

留学前は、言語や生活費、家族への負担など多くの不安がありました。特に、見知らぬ環境でうまくやっていけるのかという漠然とした不安は大きかったです。しかし実際に留学してみると、現地の人は他人の目をあまり気にせず、多様な価値観の中で生活していることを肌で感じました。また、最初は不安だった環境にも時間が経てば自然と馴染み、人とのつながりも築くことができました。研究面ではもちろん多くの学びがありましたが、それ以上に、困難な状況でも目的を持って行動すれば多くのことが実現できるという実感や、「世界の多様性」と「自分がまだ知らないことの多さ」に気づけたことが大きな財産です。正直に言うと、留学生活は楽しいことばかりではなく辛いと感じることもありました。それでも、振り返ると「行ってよかった」と胸を張って言える経験です。これから留学を目指す方には、不安があっても一歩踏み出してみてほしいと思います。その経験は、研究だけでなく人としての視野や考え方を大きく広げてくれると私は考えます。

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