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[奨励賞] 平井 遼介 / 理化学研究所, Monash University

Ryosuke Hirai, Ph.D.

[分野:天文学・宇宙物理学]


論文リンク


論文タイトル

Neutron Star Kicks plus Rockets as a Mechanism for Forming Wide Low-eccentricity Neutron Star Binaries


掲載雑誌名

The Astrophysical Journal Letters


論文内容

中性子星は大質量星が超新星爆発を起こした後に残す高密度天体であり、多くが数百 km/s の高速で運動している。この速度は爆発時の非対称性から生じる「キック」によるものとされる。また大質量星の多くは連星系を成しているが、連星内で超新星が起こると通常はキックの反動で系が解体し、生き残っても高離心率軌道となる。特に軌道の広い連星では生存がほぼ不可能と考えられてきた。

近年、Gaia 衛星により中性子星を含む 長周期かつ低離心率 の連星が複数発見された(Gaia NS)。これらは従来のキックのみの理論では説明が困難である。

本研究では、1970年代に提唱された「中性子星ロケット機構」に着目し、Gaia NS の形成を説明しうる新モデルを提唱した。ロケット機構は到達速度が小さいため過去に軽視されてきたが、キックと排他的ではなく共存しうる。本研究では、たとえロケット加速が数十 km/s 程度でも連星内では軌道離心率を大きく変化させ得ることを示した。特に強いキックによって一度長周期・高離心率となった系ほどロケットの影響が顕著であり、結果として観測されるような長周期・低離心率連星を自然に形成できる。

本モデルは連星進化に新たな視点を導入するもので、これまで説明が難しかった多くの天体現象の理解を進める可能性がある。また、本研究で導出した永年加速ケプラー問題の解析解は、惑星形成や人工衛星制御など幅広い分野への応用が期待される。


受賞者のコメント

この度はこのような賞を受賞でき、大変光栄です。運営委員の皆様及び審査員の皆様に大変感謝しております。


審査員コメント


内海 洋輔先生

最近の観測の進歩により見つかってきた既存のモデルでは説明のつかない中性子星連星の形成を長期的な加速をモデルに追加することで説明しようとする試みです。このモデル自体は中性子星の形成の理解のみならず、X線連星、重力波源、三重星の理解や、さらには惑星科学、人工衛星、白色矮星の軌道の解析にも関係し、学際的な可能性があります。その証拠として雑誌のインパクトファクターは 11.7 ですが、該当論文は出版されてからこれまで15件引用されており高い注目度を集めています。


茅根 裕司先生

中性子星連星の形成における「長周期・低離心率」という難問に対し、持続的な「ロケット効果」による解決策を提示した優れた論文です。Gaia NS1等の最新の観測事実に動機付けられた問いを、数学的な解析解へと落とし込んだ手腕を高く評価します。この成果は、他の天体力学分野へも広く応用可能な普遍的価値を持つものだと考えられます。今後も将来の観測結果を積極的に取り入れ、観測事実からの問題提起、自身での検証、そして更なる理論的な発展に取り組んでいかれることを、一人の研究者として期待しています。


Chris Packham先生

This is an interesting paper that aims to explore the acceleration of neturon stars. Objects such as these are importrant as they represent the end stage of massive stars, and hence have impact to both the local and high-z universe. The theoretical based paper provides good input to this area of astronomy


1)研究者を目指したきっかけ

小学校6年生のときにNHKで放送されていた「宇宙・未知への大紀行」という番組を見たことをきっかけに宇宙に興味を持ち、それを解き明かす物理学者という仕事に憧れを持つようになりました。


2)現在の専門分野に進んだ理由

もともとは大学生の時に指導教員が勧めてくれたことをきっかけに連星進化に興味を持つようになりました。宇宙に存在する星の半数以上は連星系を組んでいるため、連星の物理を知らずして星を理解することはできません。ですがその複雑さゆえ、理解がそれほど進んでいない分野でもあります。最近では様々な種類の高性能な望遠鏡が稼働を開始しているため、いろんな視点から連星進化の物理に迫れることが楽しいと感じています。


3)この研究の将来性

本研究の主題である中性子星ロケット機構は、今後天文学上の様々な謎を解き明かすポテンシャルを秘めています。また、今回導出した「加速ケプラー問題」の解析解は天文学のみならず人工衛星の制御などにも役立つ可能性があります。


留学や研究生活にまつわるエピソード

イギリスにいる間の出会いからオーストラリアに移ることになりました。もともとは全く考えていなかった国に住むことになりましたが、素晴らしい経験をさせてもらっています。まさに住めば都だと思うので、迷ってたら一歩踏み出すことをおすすめします。

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