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[奨励賞] 柿原 伸次 / Northwestern University、信州大学

Shinji Kakihara, Ph.D., M.D.

[分野:JRCC or NUJRA (シカゴ, イリノイ)]


論文リンク


論文タイトル

The Importance of Matching Optical Coherence Tomography Angiography Metrics to Diabetic Retinopathy Severity for Detecting Progression


掲載雑誌名

Investigative Ophthalmology & Visual Science


論文内容

糖尿病網膜症は、糖尿病に伴う微小血管障害の結果として視機能低下を招く疾患で、世界中で主要な失明原因の1つである。本研究は、糖尿病患者における糖尿病網膜症(DR)の微小血管障害進行をより早く検出するため、どの光干渉断層血管撮影(OCTA)指標が最も有効かを明らかにすることを目的とした前向き観察研究である。糖尿病患者208名(320眼)を対象に、1年間で3回のOCTA撮影を行い、複数枚の画像の位置合わせ・加算平均処理後に様々なOCTA指標を解析した。広角眼底写真を用いてDR重症度を判定し、軽症(眼科専門医への紹介不要)と重症(眼科専門医への紹介必要、リファラブルDR)に分類して経時変化を比較した結果、重症群では深層毛細血管層(DCP)の幾何学的灌流欠損(GPD)が6か月後から有意に増加し、他のOCTA指標よりも早期に進行を捉えられた。一方、軽症群では表層毛細血管層(SCP)の血管密度(VD)が1年後に低下したのみであった。これらの結果から、DRにおける微小血管障害の進行パターンは、DR重症度および表層/深層によって異なり、進行をとらえるには病期に応じて適切なOCTA指標を使い分けることが重要であることが明らかとなった。特に深層幾何学的灌流欠損(GPD-DCP)は、リファラブルDRにおける微小循環障害の早期検出に有望なバイオマーカーである。


受賞者のコメント

受賞の知らせを聞いて、びっくりしております。残念ながら授賞式は帰国日と重なってしまい、参加することができませんが、研究を評価してくださった選考委員の先生方、UJAを運営されているすべての方々に感謝申し上げます。


審査員コメント


井上 己音先生

多数あるOCTAの指標の中で、どんな指標をどの病期の患者さんに当てはめていくかを前向きに検討しています。この分野の臨床に直接携わる者ではないですが、まさに明日からの臨床に即役立つ、素晴らしいお仕事だと思います。


畑 匡侑先生

本研究は、OCTAを用いたDR進行評価において長年議論されてきた「どの指標が最も感度が高いのか」という実務的かつ本質的な課題に対し、本研究は前向き縦断データを用いて明確な答えを提示しており、かつ手法も再現性が高いと考えられ、今後の展開性も高い。


江島 弘晃先生

糖尿病網膜症は糖尿病疾患の重篤な合併症であり、本研究の知見は治療を目指すうえでの有益な研究成果といえる。1年間の前向き観察研究ということで数年間のフォローアップの成果が気になるところである。


神津 英至先生

糖尿病網膜症の重症度ステージに応じて、OCTAにてどの網膜の層のどの指標を重点的にモニタリングすべきかを具体的に示した、臨床的有用性の高い研究です。1年間の前向き観察データに基づき、進行リスクをより鋭敏に捉えるための実用的な指針を提案しており、実臨床に直結する成果と言えます。フォローアップが課題となる本疾患において、効率的なリスク層別化に寄与する重要な報告であると評価します。


金子 直樹先生

糖尿病網膜症 (DR) の進行による微小血管の虚血を非侵襲的に評価する方法として、光干渉断層血管撮影(OCTA)が期待されていますが、どの指標が最も進行を捉えやすいかは不明です。DRの病期に応じた最適な評価を確立することで個別化されたマネジメントができる可能性があります。本研究は、今回208人の糖尿病患者(320眼)を対象に1年間の追跡調査を行い、血管密度(VD)や灌流欠損(GPD)などの複数のOCTA指標を比較しました 。その結果、治療が必要なreferable DR において深層毛細血管 (DCP) の GPD が短期間での変化を捉えやすい可能性を示しました。この発見により今後の臨床研究や介入試験においてGPD-DCPがマーカーとして利用できる可能性を示唆しています。


1)研究者を目指したきっかけ

もともと研究者になりたいと思ったことはなく、臨床をする眼科医をする中で、大学院で研究する機会を得て、そこで研究をして英語を論文を世界に発表できることに面白さを感じたことが研究をするきっかけでした。私自身は英語が苦手で英語から逃げる学生時代を過ごしてきたのですが、自分の英語力でも論文を読んだり書いたりするのは可能であるとわかったことが、研究を続けるうえで大きなファクターでした。大学院生時代は、遺伝子改変マウスを用いた基礎研究を行っていましたが、実験でなかなかいい結果がでなくて落ち込んでも、臨床データで研究発表もできるのが臨床医が研究をする強みだと感じています。


2)現在の専門分野に進んだ理由

留学先は網膜イメージングの研究をしている研究室です。補償光学走査レーザー検眼鏡・光干渉断層計・超広角フルオレセイン蛍光眼底造影といった患者から得られる臨床画像検査のデータを解析して、疾患の病態や臨床的に意味のある知見を明らかにする研究をしています。今回、光干渉断層血管撮影と呼ばれる非侵襲的な技術を用いて、網膜血管の中に流れる赤血球の動きを検知・画像化し、網膜疾患の病態の進行を検出する研究を行いました。網膜イメージングは、網膜疾患評価に実際に役に立つ研究領域であることがこの分野の一番の魅力です。


3)この研究の将来性

この研究は、糖尿病網膜症の進行評価を非侵襲的に行う手法を変える可能性があり、実臨床においての患者のフォローアップで役立つ可能性があります。


留学や研究生活にまつわるエピソード

留学直後、ボスが他施設に異動する可能性があり、ラボメンバーが減った中、苦しい中でなんとか完成することができた研究で、奨励賞をいただくことができ、とても嬉しく思っております。結果的にボスの異動は延期となり、留学期間のすべてをNorthwestern Universityで研究することができ、つらくも楽しい留学生活を送ることができました。

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