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[奨励賞] 桑山 尚大 / UC Berkeley

Naohiro Kuwayama, Ph.D.

[分野:生物学・分子生物学・発生生物学・遺伝学]


論文リンク


論文タイトル

Analyses of translation factors Dbp1 and Ded1 reveal the cellular response to heat stress to be separable from stress granule formation


掲載雑誌名

Cell Reports


論文内容

私たちは、酵母に存在する二つのRNAリモデラー(Ded1とDbp1)の比較解析を通じて、細胞が熱ストレスに反応して成長を停止する仕組みを明らかにしました。これまで、熱による成長停止は「ストレス顆粒」と呼ばれる構造の形成によって起こると考えられてきましたが、本研究ではそれとは異なる仕組みが働くことを示しました。Ded1は通常、翻訳(mRNAからタンパク質を作る過程)を強く促進する因子ですが、高温になるとその機能が失われ、構造の複雑なmRNAの翻訳が抑えられます。その結果、細胞の成長が停止します。一方で、Ded1とよく似たDbp1というタンパク質に置き換えると、ストレス顆粒は形成されても成長は止まりませんでした。つまり、ストレス顆粒の形成と成長停止は別々に制御されていることが分かりました。さらに、この温度感受性はDed1のC末端に存在するわずか11アミノ酸によって決まることも発見しました。本研究は、細胞が環境変化に応じて翻訳を調節する新しい原理を示し、ストレス応答や翻訳制御の理解を大きく進展させるものです。


受賞者のコメント

この度はこのような賞をいただき大変光栄です。今回の論文に関わってくださった皆様、運営してくださったUJAの皆様、UJAスポンサーの皆様に感謝いたします。


審査員コメント


村上 重和先生

この研究は酵母におけるDed1とそのパラログであるDbp1を比較し、熱ストレス時の細胞増殖停止や特定のmRNA群の翻訳に関して対照的かつ決定的な機能を有していること解明した論文です。特に、Ded1 の11アミノ酸残基が熱ストレス下での翻訳制御に不可欠であることを特定し、基盤研究として高いインパクトを有すると考えられます。


渡瀬 成治先生

本研究は、出芽酵母をモデルに熱ストレスが起きたときに細胞が生き残りをかけて翻訳低下を行う際の詳細な分子メカニズムを明らかにした点が評価できる。特に、翻訳因子であるDed1とDbp1に着目し、それぞれが異なるメカニズムで翻訳低下を引き起こすことの詳細を明らかにした点は、素晴らしいの一言に尽きる。著者の今後の研究の発展を楽しみにしたいと思う。


井上 晋一先生

細胞が熱ストレスを受けるとストレス顆粒が形成され、全体的な翻訳が低下し、成長が止まります。したがってストレス顆粒形成は翻訳抑制と成長停止につながると信じられていました。本論文中でKuwayama氏は成長停止やmRNA選択的翻訳抑制はストレス顆粒形成とは独立して起こることを明らかにしています。Ded1と Dbp1 の性質の違いは、細胞が環境ストレスに対して「守りに入るか、守りながらも動き続けるか」を柔軟な選択をするために役立っていると思われ、ストレス顆粒形成と本質的なストレス応答を切り分けて理解する鍵になる素晴らしい成果です。このような戦略がヒトなどでも存在するのか、今後の研究が期待されます。


岩渕 真木子先生

Using a powerful yeast system, the authors show that two paralogous translation factors, Ded1 and Dbp1, have distinct functions and elegantly identify a short disordered region of Ded1 that underlies this functional divergence. The findings have broader relevance for understanding context-dependent translation regulation.


推名 健太郎先生

パラログ間のわずかな配列差(IDR)から機能差を解明し、ストレス顆粒形成と翻訳抑制を切り分けて議論した点が興味深いです。酵母を用いた緻密な遺伝学・生化学的解析でメカニズムを証明しており、基礎研究としての堅実さが光る論文です。


1)研究者を目指したきっかけ

私が研究者を目指したきっかけは、大学で生命科学を学ぶ中で、生き物の中で起きている現象が非常に精密で、まだわかっていないことが多く残されていると知ったことです。特に、教科書に書かれている知識も、もともとは誰かが疑問を持ち、実験を重ねて明らかにしてきたものだと知り、自分もそのような新しい発見に関わりたいと思うようになりました。研究はすぐに答えが出るものではありませんが、自分の手で実験し、結果を考え、少しずつ未知のことに近づいていく過程に大きな魅力を感じています。


2)現在の専門分野に進んだ理由

現在の研究テーマに取り組んでいる理由は、生命の中にまだ解明されていない仕組みが多く残されていることに魅力を感じているからです。私は特に、細胞がストレスや環境変化にどのように対応し、生き延びるのかに関心があります。


現在は、これまで見過ごされてきた「非典型的なタンパク質」が、細胞の応答や進化にどのように関わるのかを研究しています。この分野の面白さは、教科書にまだ載っていない未知の現象を、自分の実験で明らかにできる点です。小さな発見が、生命の仕組みを理解する大きな手がかりになるところに強く惹かれています。


3)この研究の将来性

本研究は、細胞が遺伝情報を正しく次の世代へ受け渡すためのしくみを明らかにするものです。プレフォールディンというタンパク質が、生殖細胞をつくる減数分裂の過程で、染色体を正しく分けるために重要であることを示しました。染色体の分配異常は、不妊や流産、先天的な疾患にも関わるため、本研究は将来的に生殖医療や染色体異常の理解に役立つ可能性があります。また、細胞がタンパク質の状態を保ちながら正常に分裂するしくみを知ることは、老化や病気の理解にもつながると考えています。


留学や研究生活にまつわるエピソード

留学生活で大変だったことの一つは、研究以外の交流の場、特にパーティーのような場に慣れることでした。研究室の外で積極的に人と話すことには最初少し苦労しましたが、その一方で、研究を通じて少しずつ多くの研究者仲間ができたことは、とても大きな財産になりました。


研究面では、長い間なかなか結果が出ず、苦しい時期もありました。しかし、諦めずに実験や考え方を見直し続けたことで、後半に大きく研究を前に進めることができました。この経験から、研究ではすぐにうまくいかない時期があっても、粘り強く続けることがとても大切だと学びました。


留学は楽しいことばかりではありませんが、新しい環境で研究に取り組み、多様な研究者と出会える貴重な機会です。留学を考えている方には、不安があっても、自分の興味を信じて一歩踏み出してほしいと思います。

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