[奨励賞] 榊原 さくら / Karolinska Institutet
- UJA Award
- 4 日前
- 読了時間: 5分
Sakura Sakakibara, M.S.
[分野:トランスレーショナル研究・臨床医学・公衆衛生]
論文リンク
論文タイトル
Consistency between the National Patient Register and the Swedish Cancer Register
掲載雑誌名
Pharmacoepidemiology and Drug Safety
論文内容
スウェーデンでは、薬剤の安全性評価に全国がん登録(SCR)が用いられるが、データ公開に時間がかかるため、薬剤による有害事象の早期発見には制約がある。一方、全国患者登録(NPR)は診断情報の取得が迅速であるが、その正確性は十分に検証されていない。本研究の一次目的は、NPRのがん診断の信頼性を評価することであり、二次目的は、糖尿病薬と膵臓がんの関連を例に、NPRとSCRでがんを検出した場合に関連性の結果に違いが生じるかを確認することであった。2018〜2020年にSCRに登録されたがん患者を対象に、NPRの診断との一致率を調べたところ、乳がん、男性生殖器がん、口腔がんでは高い一致が確認されたが、女性生殖器がん、甲状腺がん、部位不明や二次がんでは一致率が低かった。二次目的の糖尿病薬と膵臓がんとの関連では、NPRを用いてもSCRを用いても関連性に大きな差はなく、データ源の違いが結果に与える影響は小さいことが示された。登録簿間での不一致は診断過程や登録方法の違いによると考えられるが、NPRはSCRより迅速にデータを取得できるため、一部のがんについては薬剤の安全性評価や有害事象の早期検出に補助的に活用できる。これにより、薬剤安全性研究において、NPRは迅速な予備情報源として有用であることが示唆された。
受賞者のコメント
この度は、素敵な賞をいただきとても嬉しいです!共著者のスーパーバイザーとUJA関係者の皆様に感謝申し上げます。
審査員コメント
鈴木 幸雄先生
リアルワールドデータ分析において、がん登録データは比較的信頼度の高いリソースと認識されている。本研究は、スウェーデンのおける2つの異なるレジストリの一致性に着目し、癌腫横断的に診断精度の差異を分析した点で独創性が高く、今後のがんレジストリ研究を行う際の重要なリミテーションへの示唆を与えるものとして価値が高い。またnested case-control研究の手法を用いて特定の薬剤処方と膵癌リスクとの関連オッズ比が2つのレジストリ間で一致することを示したことは研究手法としても斬新であり、薬剤疫学研究の妥当性を高める一助になる研究である。
宮本 佳尚先生
スウェーデンの公的データベースにおけるがん診断名の妥当性を検証したいわゆるvalidation研究である。各がん種ごとの詳細を明らかにしたことで、将来の薬剤疫学研究におけるデータ選択の重要な指針となる。データベース研究における礎となる重要なデータであり、スウェーデンの同データベースを利用した研究で今後広く引用されることが期待される。
江島 弘晃先生
スウェーデンにおける国立患者登録簿と癌登録簿を比較した全ての癌診断の不一致性を提唱した研究成果である。当該分野に与える影響は大きいものと考える新規性の高い研究成果である。
飯島 弘貴先生
本研究は、スウェーデンの国民患者登録(NPR)とがん登録(SCR)におけるがん診断の一致性を体系的に評価し、登録データの信頼性と使用可能性に関する知見を提供した点で、薬剤疫学研究の基盤的知見を着実に積み重ねた研究です。現時点ではがん種による一致性の差異や診断・コーディングプロセスの違いなど、データの利用にあたって留意すべき課題は残りますが、本成果を基にNPRを補助的なデータソースとして活用することで、薬剤安全性評価における迅速なアウトカム把握が可能となり、今後の研究デザインや解析手法の発展に寄与することが期待されます。
1)研究者を目指したきっかけ
看護師として働く中で、「なぜこの病気になる人とならない人がいるのか」「どうすればより多くの人の健康を守れるのか」と考えるようになり、個人だけでなく、集団として健康をとらえる公衆衛生や疫学に関心を持つようになりました。特に、実際の医療・患者データ(リアルワールドデータ)を用いて社会全体の健康課題を明らかにできる点に魅力を感じ、研究者を目指すようになりました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
現在は、スウェーデンの人口ベースのデータと統計手法を用いて、人々の健康や病気の特徴を明らかにする研究に取り組んでいます。この分野の魅力は、大規模なデータから、普段は見えにくい健康のパターンや変化を捉えられる点にあります。データを通して社会全体の健康を理解し、より良い医療や予防につなげられることにやりがいを感じています。
3)この研究の将来性
この研究は、患者登録データなどのリアルワールドデータ(RWD)がどの程度正確かを検証することで、今後の疫学研究の信頼性を高めることに役立ちます。疫学研究では大規模なデータを用いることが多いため、そのデータの質を確認することがとても重要です。本研究のようなバリデーション研究により、データの信頼性が明らかになることで、研究結果をより安心して解釈できるようになります。その結果、医療や公衆衛生の分野での意思決定の質の向上や、病気の予防・早期発見などにつながることが期待されます。
留学中のサポートやコミュニティについて
非公式の日本人研究者コミュニティにはお世話になったと思います。グラント(特に日本の)に関する情報共有や、研究コラボレーション、日本からの研究訪問される方との交流など研究に関することや精神的にもサポートしてくれたと思います。
留学や研究生活にまつわるエピソード
スウェーデンでの研究生活で印象的だったのは、冬の長さと暗さです。日照時間が短く、最初は大変に感じることもありました。一方で、同僚とコーヒーを飲みながら過ごす「フィーカ」の時間や、春になって日が長くなる喜びなど、日本ではなかなか経験できないことも多くありました。
また、本研究は修士課程の研究としてスタートし、私にとって初めての論文でもありました。この研究を進める中で、スーパーバイザーの丁寧な指導やサポートに支えられながら、データから新しい知見を見出す面白さや、研究を通して社会に貢献できる可能性に魅力を感じました。そして、博士課程でより本格的に疫学研究に取り組みたいと思うようになりました。
留学生活は大変なこともありますが、その分、新しい環境や人との出会いに恵まれ、大きく成長できると感じています。少しでも興味があれば、ぜひ挑戦してみてほしいです。



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