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[奨励賞] 浅田 礼光 / University Medical Center Hamburg-Eppendorf

Nariaki Asada, Ph.D., M.D.

[分野:免疫分野]


論文リンク


論文タイトル

The integrated stress response pathway controls cytokine production in tissue-resident memory CD4+ T cells


掲載雑誌名

Nature Immunology


論文内容

組織常在性メモリーT細胞(TRM細胞)は、感染や炎症の現場に常駐し、再び刺激を受けた際にすばやく反応できる免疫細胞です。本研究では、人とマウスのCD4+ TRM細胞が、平常時には炎症性サイトカインの設計図となるmRNAを蓄えていながら、実際のタンパク質を作らない「待機状態」にあることを明らかにしました。その抑制には細胞のストレス応答経路であるISR(integrated stress response)が重要であり、中心分子eIF2αの働きによってmRNA翻訳(タンパク質合成)が止められていました。活性化されるとISRが解除され、蓄積したmRNAが一気に翻訳されて迅速なサイトカイン産生が起こります。さらに、ISRを人為的に活性化すると炎症性サイトカインの産生が抑えられ、マウスの自己免疫性腎炎が軽減しました。患者検体の解析では、腎臓や腸の免疫疾患ではTRM細胞のISR活性が低下していることも確認されました。以上より、CD4+ TRM細胞は「mRNAの貯蔵と翻訳制御」によって局所の免疫応答を即座に引き起こし、この仕組みを制御することで自己免疫疾患の治療につながる可能性が示されました。


受賞者のコメント

このような賞をいただき大変光栄に思います。審査員の皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。また、ご指導いただいた先生方にこの場を借りて改めて御礼申し上げます。今回の受賞を励みに今後も免疫学研究にさらに精進してまいります。本当にありがとうございました。


審査員コメント


小野寺 淳先生

組織常在性メモリーT細胞の反応がなぜ速いのかという疑問に答える研究だと思います。通常は、エピジェネティックな機構を介した転写誘導の速さが免疫記憶の迅速な応答を担うと理解されています。ところが本研究では、mRNAは細胞内ですでに作られており、その翻訳が素早く行われることが迅速応答の機構であると提唱し、綿密な実験によりそれを示しています。ActDを用いたmRNA安定性の実験はよく見かけますが、ActD処理がサイトカイン産生に与える影響をFACSで解析している実験には感心しました。


小田 紘嗣先生

組織常在メモリー細胞(Tissue-resident memory T cells: TRM細胞)は組織にとどまり、感染などの免疫活性化時に素早い免疫応答を担う。本研究はTRM細胞がリボソームにおいてmRNA翻訳を抑制することで、サイトカイン遺伝子のmRNAをストレス顆粒に保持し、迅速な免疫応答を準備することを報告している。その機序として、ISR(Integrated stress response:統合ストレス応答)によって誘導されるeIF2αのリン酸化が決定的に重要であることを、eIF2αの薬理学的および遺伝学的制御を通じて示している。実際、自己免疫疾患患者のTRM細胞ではISRが抑制されていることも、本仮説を支持している。本研究は免疫学における根源的な問いである「免疫の再活性化」に対し分子レベルでの詳細な説明を与えるものである。また、組織特異性に関連する要因(例えば組織における生理的低酸素の影響、TRM細胞の組織内局在に関連した免疫応答性)など、多くの新たな仮説につながる研究である。


三木 春香先生

組織常在性メモリーT(TRM)細胞が、炎症性サイトカインmRNAを多量に保持しながらも定常状態で翻訳を抑制している中核となる分子機構を明らかにしています。難治性の血管炎や炎症性腸疾患の患者検体とマウスモデルを組み合わせ、機序解明から治療実験までを体系的に示した非常に価値の高い研究であると考えます。TRMの翻訳制御を標的とするという新たな治療概念の提唱は、多岐にわたる免疫疾患への治療応用が期待されます。


1)研究者を目指したきっかけ

幼少期から生物学や医学に興味があり、京都大学医学部に進学しました。学部生の頃から柳田素子先生の研究室でご指導いただき、基礎研究の面白さに強く惹かれました。特に、自分のアイデアを実際に試せることや、予想と違う結果から新しい発見が生まれることに、研究の大きな魅力を感じました。


その後、小児科医として働きながらも、慶應義塾大学の粟津緑先生や鳴海覚志先生のもとで研究を続ける機会に恵まれました。指導者に恵まれたことも、研究を続ける上で大きな支えになったと感じています。


2)現在の専門分野に進んだ理由

現在の研究テーマは、「免疫細胞の働きをどのように制御するか」です。免疫システムが過剰に働くとアレルギーや自己免疫疾患を引き起こし、逆に働きが弱いと感染症やがんの進行につながります。免疫細胞の制御システムにはまだ解明されていない部分が多く、新しい発見が次の治療法につながる可能性があります。そうした未知の仕組みを明らかにし、研究を通して新しい治療法の開発に貢献したいと考え、この分野に取り組んでいます。


3)この研究の将来性

免疫細胞を自在に操れるようになれば、がんや自己免疫性疾患の新しい治療法開発につながる可能性があります。


留学や研究生活にまつわるエピソード

留学を通して、自分の価値観や考え方がいかに「日本的」であるかに気づかされました。それまで当たり前だと思っていたことが、海外では必ずしも当たり前ではなく、自分の常識や個性が日本社会の影響を強く受けていることを実感しました。こうした経験を通して、自分の視野が大きく広がったと感じています。


また、海外で生活する中で、異なる文化や価値観を持つ人々と協力していくことの難しさと面白さの両方を学びました。留学は決して楽しいことばかりではありませんが、それ以上に多くの気づきや成長の機会を与えてくれると思います。

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