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[奨励賞] 濱田 祐斗 / 国立病院機構相模原病院

Yuto Hamada, Ph.D., M.D.

[分野:オーストラリア・ニュージーランド]


論文リンク


論文タイトル

Distinct trajectories of treatment response to mepolizumab toward remission in patients with severe eosinophilic asthma


掲載雑誌名

European Respiratory Journal


論文内容

喘息患者のうち重症喘息はわずか5〜10%ですが、医療資源の60%以上を占めると言われています。その中でも“重症好酸球性喘息”は約80%を占め、特に治療が難しいタイプとして知られています。近年登場した生物学的製剤メポリズマブ(抗IL-5抗体製剤)により、多くの患者で喘息症状や増悪の改善が得られ、約3〜4割の患者では「寛解(喘息症状が落ち着いており、全身性ステロイド薬の使用や喘息の増悪がなく、安定した状態)」に至る可能性が報告されています。しかし、どのような経過をたどる患者が寛解に至りやすいのかは分かっていませんでした。

本研究では、オーストラリアのメポリズマブのレジストリーのデータを用いて、治療開始後の3・6・12か月の経過から治療反応パターンをクラスター解析により分類し、12か月時点の寛解達成率を調べました。寛解は12か月時点で「喘息症状が良好に保たれていて、過去6か月の間に喘息増悪や経口ステロイドの使用がない状態」と定義しました。解析の結果、①ベースラインでステロイドの使用が少なく反応が良好な群、②鼻茸を伴うような成人発症型の喘息で反応が良好な群、③喘息罹病期間が長く肺機能が低い、反応が乏しい群の3つが見つかりました。寛解達成率はそれぞれ37%、26%、6%でした。

この結果は、治療の経過によって寛解に至りやすい患者を見分けられる可能性を示しており、今後の個別化医療に役立つと考えられます。


受賞者のコメント

このたびはUJA激励賞をいただき、大変光栄に思います。日頃よりご指導、ご支援くださっている皆さまに心より感謝申し上げます。この受賞を励みに、今後も一歩ずつ研究に取り組んでまいります。


審査員コメント


鈴木 幸雄先生

好酸球性喘息患者に対するMepolizumabという分子標的薬の治療反応性ごとにその予後へのインパクトを見た研究で非常に興味深い。がん領域においても免疫療法への反応の違いや副反応の違いがその後の奏功を予測する因子になるという研究も多く、分子標的薬の臨床的反応性によって治療奏功を予測するというトレンドに沿った意義のある研究成果と思われる。特に重症化しやすい本患者集団における治療予後の改善という観点でも臨床的価値が高く、ハイインパクトジャーナルに採択されたものと推察する。


渡辺 知志先生

重症好酸球性喘息患者に対する抗IL-5抗体メポリズマブ治療への反応の多様性を解析した臨床研究です。治療アウトカムとして寛解に着目し、患者ごとの反応経路の違いを明確に示している点が特徴です。大規模臨床データに基づき、治療反応予測や層別化医療に直結する知見が得られています。今後のバイオ製剤選択や個別化治療戦略の構築において、臨床的に重要な示唆を与える、素晴らしい研究成果と考えられます。


神尾 敬子先生

臨床現場でしばしば経験される「同じ生物学的製剤であっても治療反応が異なる」という疑問に対し、本研究は重症喘息の大規模コホート研究を用いて、治療反応の trajectories と clinical remission を組み合わせた解析を行った点が興味深い成果です。重症喘息の個別化医療において、より適切な治療戦略を選択するための基盤となる重要な研究と評価されます。


三木 春香先生

本研究は、重症好酸球性喘息に対するメポリズマブの治療反応性を、group-based trajectory modellingの手法を用いて3つの軌跡に層別化した臨床的に大変意義深い報告です。特に、臨床的寛解率が著しく低い低反応群を同定し、その背景因子を明らかにした点は、生物学的製剤の適切な選択が求められる現在の喘息治療において非常に実用的な知見であり、実臨床のコホートデータから個別化医療の根拠を提示したトランスレーショナルな価値が高い論文であると考えます。


1)研究者を目指したきっかけ

日々の診療の中で、まだよく分かっていないことや、答えの出ていない課題に多く出会いました。そうした疑問を研究で明らかにし、その成果を診療に生かして患者さんの役に立ちたいと思ったことが、研究者を目指したきっかけです。


2)現在の専門分野に進んだ理由

私は現在、喘息の臨床研究に取り組んでいます。喘息は患者さんごとに症状や治療への反応が異なるため、ひとりひとりに合った治療を考えることがとても大切です。私は、喘息が落ち着いた状態を目指す「寛解」や、患者さんごとに治療すべき課題を見つける「treatable traits」という考え方に魅力を感じています。研究を通して、よりよい治療につなげ、喘息のある方の生活を少しでも良くしたいと考えています。


3)この研究の将来性

この研究によって、重症喘息の患者さんの中で、どのような人が治療によく反応し、寛解に近づけるのかが少しずつ見えてきます。将来的には、治療を始める前の段階で、その人に合った治療を考える手がかりになる可能性があります。結果として、喘息発作や経口ステロイドの使用を減らし、患者さんがより安心して日常生活を送れることにつながればと考えています。



留学や研究生活にまつわるエピソード

留学してあらためて感じたのは、挑戦してみないと分からないことが本当にたくさんあるということです。空き巣に入られるなど大変なこともありましたが、それ以上に新しい出会いや発見があり、研究者としても一人の人間としても視野が広がったように思います。慣れない環境に飛び込むことに不安もありましたが、その先には思ってもいなかった経験や学びがありました。

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