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[奨励賞] 瓜生 英尚 / The University of Texas, MD Anderson CC

Hidetaka Uryu, Ph.D., M.D.

[分野:サイエンスを遊ぼうの会(ヒューストン、テキサス)]


論文リンク


論文タイトル

Clonal evolution of hematopoietic stem cells after autologous stem cell transplantation


掲載雑誌名

Nature Genetics


論文内容

本研究は、化学療法が造血幹細胞(HSC)のクローン構造に及ぼす影響を単一クローンレベルで解明し、正常造血から悪性化までの進化過程を時系列で再構築したものである。単一細胞コロニー全ゲノム解析により、HSCは加齢に伴い一定速度で体細胞変異を蓄積することを確認し、この「分子時計」を用いて各クローンの進化を年代順に配置する手法を確立した。特に重要なのは、外因性暴露の有無にかかわらず、内因性変異(SBS1・SBS5)が常に線形的に蓄積し続ける一方で、化学療法による外因性変異(SBS-C)が相加的に上乗せされるという関係を明確に示した点である。すなわち、内因性変異が時間情報を一貫して保持することで、外因性影響を受けた症例でも正確な時系列解析が可能となった。この枠組みにより、治療前後のクローンダイナミクスを高精度に追跡し、DNMT3A、TET2、TP53などのドライバー変異が多くは若年期に獲得され、化学療法による淘汰圧のもとで既存クローンが選択的に拡大し、クローン多様性の喪失とt-MN発症に至る過程を明らかにした。本手法は、化学療法の影響下でも時系列的な進化解析を可能にする新たな枠組みであり、今後は他の腫瘍や免疫疾患にも応用が期待される。


受賞者のコメント

今回の論文からさらに次に繋がる研究を考えていきたいと思います。


審査員コメント


湯川 将之先生

コロニーWGSで治療後の正常造血を追跡し、化学療法が変異シグネチャとクローン多様性低下を招くことを定量化しています。治療法比較を拡げればt-MNリスクの監視設計に繋がります。


清家 圭介先生

化学療法が二次性血液腫瘍のリスクとなることは知られている一方で、正常造血幹・前駆細胞における変異の蓄積やクローン造血への影響は不明でした。本研究では、多発性骨髄腫の自家移植の際に用いる末梢血幹細胞から単一細胞コロニーを作製し、WGS解析を行っています。その結果、治療内容によって変異蓄積パターンが異なることが示されました。特にメルファランは、造血幹細胞の変異負荷の増加とクローン多様性の低下を引き起こし、治療関連骨髄系腫瘍の発症に関与し得ることが示唆されました。これらの結果は、高リスク患者の同定や、造血幹細胞変異のモニタリングによる発症予測につながる重要な知見です。


園下 将大先生

本論文は、多発性骨髄腫に対する化学療法が造血幹細胞のゲノムの安定性やクローンの性質に与える影響を解析したものです。化学療法間で変異の発生頻度が異なり、特にメルファランが頻度を上昇させクローンの老化を促進すること等を解明した業績は、術後の患者管理に新たな視点を加えるものと高く評価されます。


武藤 朋也先生

化学療法歴を有する患者由来HSPCを大規模に単一細胞レベルで解析し、治療がもたらす直接変異誘発とクローン再編の二面性を明快に描き出しています。治療関連腫瘍のクローン起源まで統合解析で示した点は、移植・維持療法後のモニタリングやリスク層別化の高度化に大きく貢献すると期待されます。


1)研究者を目指したきっかけ

既存の医療による限界を感じたので。


2)現在の専門分野に進んだ理由

前癌病変からのアプローチにより、治療可能性を探すことができる点。

比較的Wet/Dry双方の技術が必要とされるので,両者の技術を磨くことができる点。


3)この研究の将来性

今回の論文内で使用された技術はヒト生体内における正常細胞からがん細胞への進化の道のりを詳細に解明することに役立つと思います。


留学中のサポートやコミュニティについて

キャリアを気軽に相談できる場所としてUJAを初めて認識しました。もう少し早く認識できていたら....と思いました。


留学や研究生活にまつわるエピソード

MD Andersonで研究を開始して間もなくCOVID-19の流行が始まり、思うように研究を進められない苦しい時期が続きました。そのような中でも支え続けてくれた妻と3人の子どもたち、研究室の仲間やラボ関係者の皆様、共同研究者の方々、そして研究指導をいただいた高橋先生に、心より深く感謝申し上げます。

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