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[奨励賞] 青木 智広 / Princess Margaret Cancer Centre

Tomohiro Aoki, Ph.D., M.D.

[分野:がん分野]


論文リンク


論文タイトル

Spatially Resolved Tumor Microenvironment Predicts Treatment Outcomes in Relapsed/Refractory Hodgkin Lymphoma


掲載雑誌名

Journal of Clinical Oncology


論文内容

本研究は、AYA世代で最も頻度の高いがんの一つであるホジキンリンパ腫(Hodgkin Lymphoma, HL)を対象とし、大量化学療法併用自家造血幹細胞移植という単一の標準治療を受けた再発・難治性HL症例140例以上の初発および再発時のペア検体を用いて解析を行いました。

HLは、腫瘍細胞が検体中のわずか1〜5%しか存在せず、残りの95%以上を多様な免疫細胞が占めるという、極めて特徴的な腫瘍微小環境を持つがんです。そこで本研究では、Imaging Mass Cytometry技術を応用し、免疫細胞の構成比に加えて、腫瘍細胞との空間的距離情報を統合的に解析するための新しいアルゴリズム「Spatial Score」を開発し、35種類以上のタンパク質発現パターンを空間情報とともに包括的に解析しました。

その結果、早期に再発・難治化するHLでは、初発時と再発時の検体で共通してマクロファージの増加を特徴とする類似した腫瘍微小環境が観察されました。さらに、「Spatial Score」に基づく解析により、予後と関連する4つの免疫細胞および腫瘍細胞の空間的特徴を同定し、これらを統合した空間的バイオマーカー“RHL4S”を開発しました。このRHL4Sは、実臨床での応用を想定し、多重免疫染色法を用いた独立コホートでも有用性が確認されました。

「Spatial Score」や空間的バイオマーカーの概念は、さまざまながん種に応用可能であり、今後は空間トランスクリプトミクス解析などとの統合を通じて、より広範な腫瘍研究や精密医療の発展に貢献できると期待しています。


受賞者のコメント

9年海外で働いてきて、カナダにおいて、このような日本人の研究コミュニティは米国などに比較するとそこまで盛んではなく、なかなか、自分の研究を幅広い日本人の研究者にご紹介する機会はなかったのですが、最近UJAのことを知り、今回このような機会をいただけたことで、これが、今後海外の日本人研究者のかたとより交流していく貴重な一歩となると強く期待しております。このような貴重な機会をいただけましたこと、そして何より、UJAそ支えていらっしゃる研究者スポンサーのすべての方に心より敬意と感謝を申し上げます。


審査員コメント


磯崎 英子先生

治療前後の患者検体を用いてホジキンリンパ腫の腫瘍微小環境を可視化し、再発リスクの指標を同定した貴重な報告です。更に、臨床応用可能な予後予測モデルを構築されています。日常臨床に直結した素晴らしい研究であると思います。


渡邉 潤先生

難治性疾患である再発ホジキンリンパ腫に対してimaging mass cytometry (IMC)を行い、腫瘍微小環境(TME)の変化を早期再発群と晩期再発群での解析を行なった論文です。Single cell RNA-seqの結果と複合解析することでCXCR5陽性のHodgkin and Reed Sternberg cells とCXCL13陽性macrophagesが再発と関連することを示し、新規のバイオマーカーの開発を行っており、臨床応用が期待されます。


武藤 朋也先生

再発/難治の古典的ホジキンリンパ腫において、腫瘍微小環境を組織上の空間情報として定量化し、自家造血幹細胞移植後の転帰予測につなげた点が非常に優れています。特に、CXCR5陽性の Hodgkin/Reed–Sternberg(HRS)細胞とCXCL13陽性マクロファージの近接という特徴を見出し、予後予測スコアとして整理したうえで、独立コホートで多重免疫蛍光により再現性を検証したことは、臨床応用への展開が大いに期待されます。


今田 慎也先生

Hodgkin Lymphomaにおいて、CXCR5+ HRS cellsとCXCL13+ macrophageのcross-talkが再発予測因子として重要であることを発見した、臨床的に非常に価値のある論文だと思います。このモデルを早期の段階に用いることで、再発予測のみならず治療効果予測にも使えるのではないでしょうか。今後の課題としてCXCR5+ HRS cellsのclonal expansionのメカニズムを知ることが治療開発に繋がると思われます。


1)研究者を目指したきっかけ

血液のがん、特に悪性リンパ腫は、抗がん剤で治癒を望むことのできる癌です。様々な標的治療や、免疫療法などの新しい治療が、実際の臨床で多くの患者に投与されている、研究と臨床が近い分野でもあります。一方で、治らない人たちがいることも確かです。そうした人を医師として治療してきた経験から、治らないに対する、新しい治療の開発や、副作用の少ない、最適な治療を選択するためのバイオマーカーを確立したいと強く願うようになりました。


2)現在の専門分野に進んだ理由

腫瘍と免疫細胞の相互作用は、非常に複雑で、癌の遺伝子異常、T細胞、骨髄細胞、間質細胞など多くの細胞が相互作用をし合って、腫瘍が住みやすい環境を整えています。この複雑さを、最新のシングルセル解析や、空間解析技術の進歩により、詳細に読み解くことができるようになってきました。またこの分野は、多くの癌に共通した治療法につながる可能性もあります。


3)この研究の将来性

本研究は、ホジキンリンパ腫という癌が、抗がん剤治療の前後でどのように、腫瘍の周りの免疫細胞も含め、どのように変化していくのかということを、空間的位置情報も含めて、明らかにしました。特に、治療にうまく反応しない人に、特徴的な、腫瘍が発現しているマーカーや、腫瘍の近くに位置している免疫細胞を明らかにすることで、それを元にした、治療反応予測のバイオマーカーを確立しました。また、今後、そうした治療に抵抗性を示すホジキンリンパ腫の特徴を基に、新規の治療法を確立することで、現在の治療がうまくいかない人に有効な新たな治療戦略を立てることにつながる可能性があります。


留学中のサポートやコミュニティについて

カナダにおける情報が米国などに比較し、圧倒的に少ないと思いますので、今後拡充いただければ幸いです。


留学や研究生活にまつわるエピソード

留学は、研究面だけでなく、いろんな面で人生の視野を広げてくれると思います。楽しいことばかりではありませんし、文化的、金銭的な苦労もありますが、家族で乗り越えることで家族の絆も深まります。何より、人との出会いが、自分の人生を思わぬ方向に導いてくれます。自分は、最初の留学先のボスとの出会いが、自分の可能性を最大限に引き出してくれ、海外でPIになるという夢を叶えてくれました。また、学生や、ポスドクをどう研究面で指導するかだけでなく、キャリアをどう導いてあげるかが大切だということを学び、それは自分が後輩たちに伝えていきたいと思っていることです。また留学時代に出会った仲間は今でも一緒に共同研究をしたり、語り合ったり、一生の財産になります。迷っている人は、ぜひ、新しい扉を開いてみてください。

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