[奨励賞] 鳥居 志保 / Institut Pasteur
- UJA Award
- 3 日前
- 読了時間: 5分
Shiho Torii, Ph.D.
[分野:ヨーロッパ]
論文リンク
論文タイトル
Polygenic viral factors enable efficient mosquito-borne transmission of African Zika virus
掲載雑誌名
Nature Communications
論文内容
ジカウイルスは、主にネッタイシマカによって媒介されるウイルスで、ここ数十年の間、大規模なウイルスの感染流行が報告されています。このウイルスはアフリカ系統とアジア系統の2つの遺伝子系統に分類されます。アフリカ系統のウイルスは、ネッタイシマカによって、より効率的に伝播されることがわかっていますが、その遺伝的な理由は解明されていませんでした。そこで、本研究では、アフリカ系統とアジア系統のジカウイルスの遺伝子を交換したキメラウイルスを作出して蚊への感染実験を実施しました。その結果、アフリカ系統ウイルスの構造遺伝子がウイルスの細胞内への取り込みを促進し、非構造遺伝子が効率的なゲノム複製と感染性粒子の産生に貢献することが明らかになりました。蚊での伝播されやすさの違いは主に、ウイルス構造遺伝子によって決定されており、単一の遺伝子による影響ではないことを示しました。さらに、我々は蚊体内におけるウイルス感染動態を反映する数理モデルを開発し、ウイルスの伝播のしやすさは、ウイルスが蚊の唾液腺を通過できる能力に左右されることを示しました。この研究は、ジカウイルスの進化と発生における系統特異的な適応を浮き彫りにしました。
受賞者のコメント
フランスでの研究成果を評価して頂けたこと、大変嬉しく思います。
審査員コメント
髙濵 充寛先生
本研究は、ジカウイルスが蚊を介して効率よく伝播する仕組みを、ウイルスの複数の遺伝子の組み合わせという観点から明らかにした点で重要な成果を示しています。特定の単一因子ではなく、構造遺伝子と非構造遺伝子が協調して伝播能を高めることを示したことで、ウイルス進化や流行拡大の理解を大きく前進させました。今後は、本研究で得られた知見を基盤として、他の蚊媒介ウイルスへの一般化や、流行予測モデルの高度化、さらには感染症制御戦略の開発へと発展することが期待されます。
青井 勇樹先生
ジカウイルスの系統による伝播効率の違いを遺伝学的に調べた国際的共同研究。アフリカ系統とアジア系統のウイルスゲノムを部分的に交換したジカウイルスを媒介者であるネッタイシマカに感染させるユニークなin vivo実験をおこない、アフリカ系統の多数のウイルス遺伝子が総合的に伝播効率を向上させることを明らかにした。いっぽう、遺伝学的実験とシミュレーションを相補的に活用した研究戦略も興味深い。社会的貢献度の高い研究成果であり、今後のジカ熱流行対策の基盤として、ゲノムの違いに基づいた感染シナリオの構築や、ウイルス動態の詳細な解析などへの応用が期待できる。
丸山 隼輝先生
ジカウイルスはネッタイシマカにより媒介される感染症で近年においても流行が報告されており、特に新生児に重篤な先天性障害を引き起こす公衆衛生学的に重要な感染症の一つである。本研究ではアフリカ系統、アジア系統およびそれらの組み換えウイルスを作出し蚊における伝播性および系統間での伝播性の差をもたらす責任遺伝子について解析したものである。本研究の成果はジカウイルスの伝播性およびその生活環についての理解を深めるものであり、感染症制御に重要な知見をもたらす意義のある研究である。
湯川 将之先生
蚊媒介伝播の強さは単一変異ではなく、構造/非構造領域など複数因子の組合せで決まることを実証しています。唾液腺通過などボトルネック定量が進めば流行予測・監視へ直結するものと期待されます。
1)研究者を目指したきっかけ
タイの大学に3か月滞在した時と、ベトナムの生鳥市場に訪れた時に、東南アジアで人獣共通感染症が社会的大問題となっていることを実感しました。より良い感染症対策を考え続けられる人になりたいと思い、研究職を選びました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
世界には数千種類の蚊がいるのですが、ほんの一部の蚊がウイルスを増やして運ぶことができます。一方でウイルスに関しても、ほんの一部の蚊のウイルスが人に病気を引き起こしてしまいます。
蚊が運ぶウイルス感染症の背景にある、ウイルスと蚊の絶妙なマッチングに魅力を感じて、生きている蚊を使った研究をしています。
3)この研究の将来性
例えば、ウイルスを運ぶための蚊の因子をブロックすることで、新しい感染症対策を提示できるのではないかと考えています。また、ウイルスを運びやすい蚊の因子、蚊に運ばれやすいウイルスの因子が分かれば、危険な蚊やウイルスがいる地域を、より簡単に知ることができると考えています。
留学中のサポートやコミュニティについて
-研究所内及びパリの日本人コミュニティは情報交換に役立ちました。
-海外から応募できるグラントの情報共有ができる場があって欲しいです。
-Posdoc Care officeという研究所内のポスドクメンターオフィスで、キャリアアップ1年前から2週に一回、メンターと面談していたことが最も印象に残る支援です。ポスト応募の戦略を考え、自己分析ができると同時に、不安定なポスドク生活で自分の目標を再確認することで、精神的に落ちていた時にとても支えとなっていました。日本にも欲しいです。
留学や研究生活にまつわるエピソード
テクニシャンを含め、どのポジションの研究者も、それぞれのプライドと哲学を持って研究を進めるフランスのサイエンスが私は好きです。また、容赦のないディスカッションと、終わった後に引きずらない関係性を、驚きながらも楽しんでいます。
研究以外では、パリでカポエイラを始め、たまにクラスで教えるようにもなりました。言葉が100%通じない私に対しても信頼を寄せ、めげずに理解し合おうとしてくれるチームメンバーの姿勢には見習いたいと思うと同時に、過去に留学生に対して私も同じことができていたか反省する部分でもありました。将来自分のチームを守った時に、チームメイトを信頼し、どんな人にも耳を傾けられる人物でありたいです。



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