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執筆者の写真cheironinitiative

[論文賞] 河野龍義 / Indiana University

Tatsuyoshi Kono, PhD.

糖尿病発症因子としてのカルシウムセンサーSTIM1の機能

Diabetes, 67 (11): 2293-2304, 2018

研究分野:Cell biology, Diabetes   留学期間 > 6 years 論文リンク  http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2018/08/17/db17-1351


論文内容:インスリンは血糖低下作用を持つ唯一のホルモンであり、インスリンを分泌する膵臓β細胞の機能不全は糖尿病の要因となる。このβ細胞機能不全の重要なメカニズムとして小胞体ストレスとそれに伴う小胞体カルシウム濃度低下が関与することが知られている。免疫細胞などではSTIM1と呼ばれる膜タンパク質がカルシウムセンサーとして機能し、Store-Operated Calcium Entry(SOCE)と呼ばれる機構により小胞体のカルシウム濃度低下を速やかに補充することでホメオスタシスを調節すること、さらにSTIM1ノックアウトは重篤な免疫不全を引き起こすことが報告されているが、膵臓β細胞でSTIM1およびSOCEの詳細な機能に関する知見は極めて少ない。受賞者のグループはSTIM1およびSOCEに着目して小胞体のカルシウムホメオスタシスの異常がどのようにβ細胞に影響するのかを検討した。まず2型糖尿病のヒトおよび糖尿病モデルマウスの膵臓β細胞ではSTIM1タンパク発現が低下していることが明らかになり、同様に培養細胞でもサイトカインや脂肪酸などの糖尿病ストレスによりSTIM1は低下し、SOCEが大きく阻害されることが認められた。次にSOCE阻害薬およびSTIM1を欠損させた膵臓β細胞を用いた検討により、STIM1およびSOCEが阻害されると1)小胞体のカルシウム濃度の低下、2)小胞体ストレスの増大、3)グルコース刺激に対するカルシウムのオシレーションの低下、4)インスリン分泌の低下という機序でβ細胞機能不全が引き起こされる可能性を示した。(概略図はFigure.8)さらにSTIM1が低下している2型糖尿病のヒト膵島にアデノウイルスを用いてSTIM1を導入させるとインスリン分泌が回復することから、STIM1およびSOCEが糖尿病治療ターゲットとなる可能性を示した。(受賞者はFirst & Corresponding authorとして論文を発表し、Figure4の電顕写真は雑誌表紙として採用された。)

審査員コメント:

The endoplasmic reticulum is an important organelle for calcium regulation as well as protein folding.  This article investigates the mechanism of calcium dys-homeostasis under diabetic conditions, focusing on a specific gene, STIM1 - stromal interaction molecule 1.  The study employed various resources including human subjects and animal models, and indicated a possibility of treating diabetes from a novel perspective.(横田先生)


小胞体のカルシウムホメオスタシスの異常がどのようにβ細胞に影響するのかを検討した成果から、STIM1およびSOCEが2型糖尿病の新規治療薬のターゲットとなる可能を示唆した優れた論文です。(栗原先生)

受賞者コメント: UJA論文賞を受賞できて、とても嬉しいです。論文賞の立ち上げに関わった日米の研究者の皆さんとインディアナ日本人会のサポートに感謝します。また、一緒に受賞された皆さんの論文を読み、非常に刺激を受けました。今回の研究成果がさらに進むように努力を続けたいと思います。



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