[論文賞] 村山 貴彦/Fox Chase Cancer Center
- UJA Award
- 16 時間前
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Takahiko Murayama, Ph.D. [分野:がん分野]
論文リンク
論文タイトル
Targeting DHX9 Triggers Tumor-Intrinsic Interferon Response and Replication Stress in Small Cell Lung Cancer
掲載雑誌名
Cancer Discovery
論文内容
抗PD-1抗体をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬 (immune-checkpoint blockade; ICB) はメラノーマ等の腫瘍に対しては高い奏功率を示す一方で、腫瘍微小環境中への免疫細胞の浸潤が少ないいわゆるcold tumorに対しては抗腫瘍効果が限定的であることが報告されている。本研究では、cold tumorの代表例として知られる小細胞肺がんを用い、腫瘍細胞内での免疫応答を誘導することでICBへの感受性を改善させる方法を見出すことを目的とした。
ここでは、免疫応答を誘導する方法としてウイルス様の構造である二本鎖RNAを認識する経路に着目した。二本鎖RNAの解消に関わる因子のスクリーニングを行い、RNA helicaseの一種であるDHX9を同定した。興味深いことに、DHX9を欠損した細胞中では二本鎖RNAの蓄積が見られただけでなく、DNA複製ストレスに由来する細胞質中の二本鎖DNAの増加も観察された。これらの細胞では二本鎖RNAと二本鎖DNAをそれぞれ認識する経路の活性化が示唆され、腫瘍固有の免疫応答が強力に誘導されていた。さらに、マウスを用いた実験ではDHX9欠損細胞がICBに対して有意に高い感受性を示すことも確認できた。これらの結果はICBとの併用においてDHX9が小細胞肺がんの有望な標的となることを示している。
受賞者のコメント
この度はこのような素晴らしい賞をいただき、大変光栄に思います。本研究はPIであるIsraelのみでなく、Fox Chase内外の多くの方にサポートしていただいて進めてきました。この場をお借りして御礼申し上げます。また、審査・運営に携わっていただいた先生方にも感謝申し上げます。独立後のテーマとも大きく関わっている本論文を評価していただき、とても嬉しく思います。
審査員コメント
渡辺 知志先生
免疫応答に乏しい小細胞肺癌を免疫応答性腫瘍へと変換する標的としてDHX9を同定した報告です。腫瘍細胞をウイルス感染様状態に誘導し、免疫反応を活性化させるという発想は新規性が高く、大変興味深い内容です。実際に腫瘍増殖抑制に加え、免疫チェックポイント阻害療法への感受性が増強されることを示した点は大きな成果と考えます。予後不良で治療選択肢の乏しい小細胞肺癌に対し、新たな治療戦略の基盤となる重要な研究であると思います。
小林 祥久先生
免疫療法が効かないcoldタイプのがんを、免疫療法の効くhotタイプに変換する治療戦略が注目を浴びています。本論文はRNA helicaseに着目したCRISPRスクリーニングにより腫瘍内在性自然免疫を抑制する新たな因子としてDHX9を発見しました。DHX9のノックアウトでdsRNA蓄積とR-loop誘導が起こり、免疫活性化と複製ストレスを引き起こし免疫チェックポイント阻害剤の効果が増強するという魅力的なデータから、臨床応用が大いに期待されます。
平田 英周先生
肺小細胞がんにおいてDHX9の欠損が細胞質DNA/RNAハイブリッドおよびR-loop蓄積させ、cGAS-STING経路を介したIFN応答およびDNA損傷・複製ストレスを誘導し、腫瘍増殖の抑制と免疫チェックポイント阻害療法の効果増強をもたらすことを示しています。治療抵抗性の高い肺小細胞がんにおいて、免疫応答が乏しい腫瘍微小環境を免疫活性の高い状態へと転換し得る新たな治療戦略を提示した極めて意義深い研究成果であると評価できます。
磯崎 英子先生
がん細胞の内因性免疫を賦活化することは、がん免疫療法の有効性を高める有効な手段として認知されてきました。本研究は、内因性免疫をコントロールするメカニズムを解明し、がん免疫療法の有効性を改善するための新たな治療ターゲットを提案しています。今後、腫瘍微小環境を考慮した検討を経て、臨床応用へと発展されることを期待しています。
園下 将大先生
難治性の高い小細胞肺がんで自然免疫を活性化する手段としてDHX9の同定に成功した論文です。DHX9の阻害によりdsRNAの細胞内蓄積を促進することで炎症様反応を促進し、免疫チェックポイント療法の効果を増強する新たなアイデアは、小細胞肺がんにとどまらないインパクトを有すると期待されます。
1)研究者を目指したきっかけ
祖父が研究者だったこともあり、小さい頃からなんとなく研究者という職業に興味を持っていました。本格的に研究を仕事にしたいと思ったのはメンターである後藤典子先生のラボで心から面白いと思える研究に出会えたからだと思います。
2)現在の専門分野に進んだ理由
メラノーマに対する抗PD-1抗体の臨床試験の結果を初めてみた際、免疫療法の有望さに驚いたのを今でも覚えています。しかし研究が進むにつれ、免疫療法の効きづらいがんがあるということも明らかになってきました。そうしたがんに対する有効な治療戦略を見つけたいと考え、現在の研究テーマを選びました。
3)この研究の将来性
double-strand RNAを形成し得るmRNAの発現を促すという従来のアプローチのみでなく、それらの二次構造を解くヘリケースを阻害することでもがん固有の免疫応答を誘導できることを示せた点は、免疫療法の応用範囲を広げる可能性があると考えます。
留学中のサポートやコミュニティについて
日本人コミュニティに属してからは情報収集がとても効率的になりました。特定の大学内以外ではそれほど知られていないものも多いと思いますので、それらの情報をUJAのような信頼できるところがまとめてくださると非常に助かります。
留学や研究生活にまつわるエピソード
立ち上がったばかりのラボに最初のポスドクとして加わった為、色々と手探りで進めていく必要がありました。苦労したことも多くありますが、おかげで研究所内の多くの人と積極的に関わるようになって大切な友人もたくさんできたので、非常に良い経験になったと思います。本研究を支えてくれた方々に加え、Job huntなどの様々な面でサポートしてくださったGlennには心より感謝しています。



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