[論文賞] 永田 瑞/東京科学大学
- UJA Award
- 2 時間前
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Mizuki Nagata, Ph.D.
[分野:ミシガン金曜会 (ミシガン)]
論文リンク
論文タイトル
Wnt-directed CXCL12-expressing apical papilla progenitor cells drive tooth root formation
掲載雑誌名
Nature Communications
論文内容
歯根は、歯を顎骨に支える機能を担い、健全な歯列機能を維持するために重要である。歯根形成は、歯胚の上皮と間葉組織の細胞が相互に作用することにより伸長されるが、特に歯根尖部の間葉系細胞は、歯根形成期において活発に増殖・分化し、中心的な役割を果たすと考えられている。しかし、生体内におけるこれら歯根尖部の間葉系細胞の詳細な細胞運命や分化制御機構はこれまで明らかにされていなかった。
そこで我々は、生体内における歯根尖部幹細胞のダイナミクスを解析するため、タモキシフェン誘導性Cxcl12-creERマウスを新規に作出し、歯根尖部細胞の細胞系譜追跡 を行った。歯根形成期において経時的に細胞運命を組織切片にて観察を行ったところ、CXCL12陽性歯根尖部細胞は歯根を形成する歯髄や象牙質、また歯根外部表面のセメント質の細胞へと分化した。さらに、定常状態ではCXCL12陽性細胞は歯槽骨の骨芽細胞へは分化しないが、骨損傷時には骨芽細胞へと分化し、可塑性を持ち組織修復に貢献した。また、CXCL12陽性歯根尖部細胞特異的にb-Cateninを欠失させ古典的Wntシグナルを不活性化したところ、象牙芽細胞やセメント芽細胞への適切な分化が阻害され、歯根形成細胞著しい歯根形成不全を引き起こした。
以上より、CXCL12陽性歯根尖部細胞は古典的Wntシグナルを介して象牙芽細胞やセメント芽細胞を供給し歯根形成に寄与し、さらには骨損傷時には骨芽細胞を供給し組織修復にも貢献することが明らかとなった。
受賞者のコメント
この度は論文賞に選出いただき、大変光栄に存じます。審査員の皆様、またUJA運営の皆様に心より感謝申し上げます。
審査員コメント
飯島 弘貴先生
本研究は、CXCL12陽性歯根尖乳頭(apical papilla)由来細胞を特異的に追跡可能な独創的 in vivo モデルを提示することで、歯根形成研究に新しい標準手法を導入しました。このモデルの新規性と拡張性は、歯根形成メカニズムの精緻な理解にとどまらず、将来的な歯根・歯周組織再生を目指したトランスレーショナル研究においても長期的に高い価値を有すると考えられます。今後、本モデルを基盤としたさらなる分子機構の解明と再生医療応用への発展を期待します。
永田 向生先生
申請者らはAP細胞が歯根形成をどのように調整するのかを, CXCL12+細胞に注目して、ノックアウトマウスや遺伝子追跡(セルリネージ解析)」という手法を用いて、解析しました。その結果、CXCL12+細胞は、歯根とその周辺組織を作り分ける前駆細胞であることを証明しました。これには主にWntシグナルがアクセルとして作用し、TGF-b阻害がブレーキの調整として作用していた。図が大変見やすく、細胞の可塑性を示した大変有意義な研究だと思います。齧歯類の結果が人類にそのまま応用できるかは不明な点もありますが、逆にその可塑性の違いなどを深く掘り下げていっていただく今後の研究に期待したいです。
岩渕 真木子先生
Using beautiful lineage-tracing analyses, the authors identify specific progenitor populations regulated by Wnt signaling that drive tooth root formation. The work has implications for regenerative dentistry.
渡瀬 成治先生
本研究は、マウス臼歯の歯根尖端部に存在するCXCL12陽性細胞に着目し、この細胞の運命追跡を行なったところ、歯根形成において重要な未知の間葉系前駆細胞であることを発見した。また、歯根形成の分子メカニズムの一端を明らかにした。これらの発見は、今後の歯科分野の再生医療の実現に大きく貢献しうるものであるため、大いに評価したい。また、著者は、本応募論文と同時に、歯槽骨形成に必要な未知の間葉系前駆細胞の発見および歯槽骨形成メカニズムの一端も明らかにしているため、これらの発見を高く評価したい。著者の研究の今後の益々の発展を楽しみにしたい。
1)研究者を目指したきっかけ
歯科治療をより深く理解し、専門的な知識や生物学の基礎を学びたいと考え、大学院に進学しました。そこで研究に取り組む中で、自分で疑問を見つけ、その答えを探していく基礎研究の面白さに気づきました。この経験を通して、研究を仕事として続けていきたいと思うようになりました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
大学院時代、私は歯の周囲から採取できる「間葉系幹細胞(MSC)」を用いた、歯周病の再生治療の研究に取り組み始めました。研究を進める中で、「幹細胞とはそもそもどのような細胞なのか」という疑問に強く惹かれるようになり、その仕組みや働きをより深く理解したいと考えるようになりました。
現在の研究では、生体の中で幹細胞がどこに存在し、どのような役割を果たしているのかという根本的な問いに取り組んでいます。このように、体の中のしくみを基礎から明らかにできる点に、この分野の大きな魅力を感じています。
3)この研究の将来性
本研究は、歯根形成の仕組みを解明するだけでなく、歯根や歯槽骨の再生医療や幹細胞治療にも大きく貢献する可能性を持っています。
留学中のサポートやコミュニティについて
異国の地で他の日本人研究者とつながる機会は、精神的にも大変大きな支えとなりました。
留学や研究生活にまつわるエピソード
2018年に渡米し、約7年の歳月をかけて筆頭著者としてのプロジェクトをまとめることができ、大変嬉しく思います。さらに、歯根形成メカニズムに着目した本論文と合わせて、別論文にて新たな歯槽骨形成メカニズムを筆頭著者として報告し(Nagata, Ono N, Ono W et al. Nat Commun 16(1):6061, 2025)、Back-to-backで2報の論文をNature Communicationsへ掲載することができました。同時に論文を投稿し、2つのプロジェクトのリバイス実験を並行して行ったことは、大変貴重な経験となりました。何度も心が折れそうになる時がありましたが、留学先であるOno研究室のメンバーの多大なる協力で無事実験を乗り切ることができ、本当に感謝しています。



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