[論文賞] 藤本 征史/University of Toronto
- UJA Award
- 1 時間前
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Seiji Fujimoto, Ph.D.
[分野: 天文学・宇宙物理学分野]
論文リンク
論文タイトル
Primordial rotating disk composed of at least 15 dense star-forming clumps at cosmic dawn
掲載雑誌名
Nature Astronomy
論文内容
私たちは、ビッグバンから約9億年後 (cf. 現在の宇宙年齢138億年)という宇宙のごく初期に存在した若い銀河を、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とアルマ望遠鏡、そして重力レンズ効果と呼ばれる自然の増光・増大効果を用いて詳しく観測しました。その結果、この銀河は一つの回転する円盤ではなく、少なくとも15個以上の小さな星の集まり(星団)が密集した、「ぶどうの房」のような粒々の構造を持つことが分かりました。このような細かな内部構造が分解されたのは初めてで、これまでのハッブル望遠鏡や従来のシミュレーションでは予測されていなかった、新しい種類の銀河の姿です。
またこの銀河が特別なのではなく、重さや大きさ、星の生まれる量などは当時の一般的な銀河と同じ性質を持っていました。つまり、初期の宇宙にある多くの銀河が、実はこのように星団が集まった粒々の構造をしている可能性を示しています。しかし現在の望遠鏡の通常の観測では解像度が足りず、それらが見えていないだけかもしれません。
今回の発見は、銀河がどのように誕生し成長したのかという基本的な理解に見直しを迫るものです。特に、星の誕生や超新星爆発、ブラックホールが宇宙初期でどのように影響したかを考え直す必要があります。「宇宙ぶどう」と名付けられたこの銀河は、銀河形成の謎を解く重要な手がかりとなる成果です。
参考 日本語プレスリリース : https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/16747/
受賞者のコメント
この度は論文賞を受賞することができ大変光栄に思います。今後も宇宙の深淵に触れ、世界中のあらゆる人々にとって、明日へのワクワク感が少しでも向上するような研究を、引き続き世界の最前線で楽しんでいきたいです。審査および運営に携わっていただいた審査員の先生方およびUJA論文賞部の皆様に感謝申し上げます。
審査員コメント
濱口 健二 先生
宇宙の誕生初期にどのように銀河が成長したのか、その描像に迫った素晴らしい論文です。Fujimoto 氏は先の研究でこの重要な重力レンズ天体を発見し、高倍率の JWST 宇宙赤外線望遠鏡の観測時間を勝ち取って、本研究に結びつけました。各々のデータの解析結果を有機的に掛け合わせて、銀河の形状、構成ガスの状態に関して重要な帰結に到達した力量には感嘆いたします。本研究をさらに推し進めて、初期宇宙の進化の研究を先導することを期待しています。
Chris Packham 先生
This is a very strong paper using state of the art facilities, including the JWST and ALMA. The area of science being exlpored is both extremely timely and important. The result is important and will have a strong impact in various fields. Excellent result, congratuations.
1)研究者を目指したきっかけ
小学生のころ、親から「宿題をしなさい、勉強しなさい」と言われてもなかなかやる気が出なかったのですが、ふと、深海や宇宙のことなら楽しそうだし勉強してみたい、と思ったのが最初のきっかけでした。最終的には、宇宙のほうがより圧倒的に根源的だなと感じ、宇宙物理をしっかり学べる大学に進学しました。大学に入ってからは遊ぶことも多かったのですが、いよいよ将来の進路を考える段階になったとき、自分が本当にワクワクできるのは何かと改めて考えました。そのときに気づいたのが、お金を稼ぐこと以上に、自分の知的好奇心を追いかけることに強い魅力を感じているということでした。それならば大学院に進学し、研究者としてどこまでできるのか挑戦してみようと決意しました。その延長線上で研究を続けてきた結果、気づけば現在に至っています。
2)現在の専門分野に進んだ理由
"宇宙がどのように始まり、現在のような姿になったのかという根源的な問いに興味を持ち、この分野に進みました。現在は、特に宇宙誕生から間もない時代にできた「最初の銀河」がどのように生まれ、進化してきたのかを研究しています。私たちが普段目にしている天の川銀河のような構造も、長い時間をかけて形成されてきました。その「はじまり」を解き明かすことは、宇宙全体の歴史を理解することにつながります。
この分野の大きな魅力は、人類がこれまで見ることのできなかった遠い宇宙を、最新の望遠鏡(例えばジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)によって直接観測できるようになった点です。理論だけでなく、実際のデータから宇宙の歴史を読み解いていく過程には、大きな発見の可能性があります。
宇宙の研究は一見すると遠い世界の話に思えるかもしれませんが、「私たちはどこから来たのか」という問いに向き合う、とても人間的で身近な学問でもあります。そうした普遍的な疑問に対して、自分の手で少しずつ答えに近づいていけることに、大きなやりがいを感じています。
3)この研究の将来性
衣食住を満たすために生きることは、ある意味では動物でもできることです。対象的に、役に立つわけではないことにも情熱を持ち、時間や労力を注ぐことができるのが、人を人たらしめているように思います。宇宙の研究もその一つで、どのように宇宙が始まったのか、どのように現在の姿になったのか、といった根源的な問いに向き合う学問です。こうした研究に携わることで、自分が本当に知りたいことは何か、何にワクワクするのか、と向き合い続けることができます。これは、将来どのような道に進むとしても、自分らしく生きる上で大切な力になると思いますし、そうした情熱は他の人にも波及し、"豊かな"社会醸成に役立つのだと信じております。



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