[論文賞] 遠藤 健一/University of Stuttgart
- UJA Award
- 12 時間前
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Kenichi Endo, Ph.D.
[分野:化学・工学・物理・数学分野]
論文リンク
論文タイトル
Crystalline porous frameworks based on double extension of metal–organic and covalent organic linkages
掲載雑誌名
Nature Synthesis
論文内容
金属–有機構造体(MOF)は2025年ノーベル化学賞の対象ともなった、分子レベルで細かく設計できる多孔性材料として注目されている材料です。同様に設計可能な多孔性材料として、共有結合性有機構造体(COF)というものもあります。MOFは金属と有機分子が可逆的に結合してできるため高い多孔性と結晶性を持ち、COFは有機分子同士が強固に結合しているため化学的に安定です。しかし、これらの材料では多孔性・結晶性と化学的な安定性を両立することは難しい課題となっています。本研究では、それぞれの長所を併せ持つ新しい材料「MOCOF」を開発しました。具体的には、コバルト–アミノポルフィリン錯体とアルデヒド化合物を反応させることで、金属–アミン配位とイミン縮合という2種類の反応を同時に用いて三次元的な網目構造を持つ材料MOCOF-1を合成しました。MOCOF-1の性質を調べたところ、MOFのような高い多孔性(比表面積2800 m2 g−1)・結晶性(結晶サイズ最大100 µm)とCOFのような優れた化学安定性(水・塩基に安定)を両立していることを確認した。本研究は、異なる種類の結合を組み合わせるという新たなMOF・COFの設計の発展を示し、多孔性材料の化学的多様性をさらに広げる成果です。
受賞者のコメント
このような賞を頂くことができ、大変光栄に思います。審査員および関係者の方々には感謝申し上げます。
審査員コメント
金井田 將裕 先生
2025年のノーベル化学賞が記憶に新しいMOF(metal-organic framework)やCOF (covalent organic framework)に代表されるレティキュラーケミストリー(網状化学)は、その特異かつ均一な微細孔と結晶性による物理化学的性質からガスの貯蔵や触媒、ドラッグデリバリーなど固体材料、薬学など多岐にわたる応用が期待される研究領域です。
上記のMOFおよびCOFはそれぞれ金属-有機配位結合と共有結合性有機結合の特性から、前者は結晶性が高くX線構造解析が容易な一方で、後者は共有結合由来の高い安定性を示します。これまでにMOFおよびCOFの“良いとこ取り”を目指した”MOCOF”を創成する試みはいくつかなされてきましたが、金属-有機配位結合と共有結合性有機結合のいずれか一方のみを拡張させる手法にとどまり、両者を拡張する手法は報告がありませんでした。著者らは、コバルト-アミノポルフィリンとテレフタルアルデヒドのイミン形成に着目し、合成したMOCOFの物理化学的性質を検証しました。その結果、Co原子の酸化状態や水分量によって制御可能な結晶性/安定性を担保する新たな多孔性材料を創成することに成功しました。今後、本研究を起点として更なる高機能性固体材料の開発が加速すると期待されることから、本論文は当該分野において重要な位置を占める論文であります。興味深く読ませて頂きました。
庄司 観 先生
本論文では、結晶性の高いMOFと安定性の高いCOFの両方の特徴を有するMOCOFという新たな網目状構造材料を報告している。専門分野外であるため、MOCOF構造体の設計や合成にかかる難しさや面白さを正しく評価することは困難だが、本材料の応用性の高さは研究分野を超えて大きなインパクトがある。また、応募者が責任著者であること、PIとして海外で研究室を始められていることも評価します。
内田 昌樹 先生
本論文は、MOFとCOFという二種類の多孔性材料の利点を融合するために、金属–配位結合と共有結合を同一官能基で同時に拡張する「二重拡張(double extension)」という新しい設計概念を提案した点でこれまでのMOF/COFハイブリッド研究のブレークスルーとなるものである。配位結合に由来する高い結晶性と、共有結合に由来する化学的安定性を単一フレームワーク内で両立させ、実際に単結晶X線構造解析が可能な高結晶性・高比表面積材料を実証した点は、非常に高く評価される。本研究で示されたMOCOFはコバルトとポルフィリンの骨格を用いているが、本研究で示された設計指針の、他の金属や配位子への拡張が待たれる。MOCOFでなければ成し得ない物性評価と実用材料への発展が今後大いに期待される。
1)研究者を目指したきっかけ
子供の頃に単純ながら多様性のある化学構造に魅せられ、化学の道を志しました。大学で実際の研究に触れ、未知を切り開く面白さにのめり込みアカデミックな研究者になることを決意しました。
2)現在の専門分野に進んだ理由
MOFとCOFは1990年代に発明された比較的新しい物質群で、2025年のノーベル化学賞の対象にもなりました。それまでの固体物質より高い多孔性・結晶性・設計性を持つため、分子貯蔵、分離、触媒、検出など様々な応用が進んでいます。個人的には、美しい結晶構造や設計次第で様々な構造・機能を生み出せる点が魅力です。
3)この研究の将来性
今回発見したMOF-COFハイブリッド結晶は、MOFの課題である安定性とCOFの課題である結晶性を解決する新しい設計指針を示しました。これにより、将来新しい触媒や分離材料の開発が進むと期待されます。
留学や研究生活にまつわるエピソード
留学すると最初は価値観や文化の違いに振り回されますが、それも通して柔軟性を身に付けられれば貴重な体験になります。また、私は博士課程の途中で3ヶ月の短期留学をした経験があったため、スムーズに2回目の留学を進めることができました。当初は知見を広げるための1年だけの予定でしたが、ドイツの価値観・研究文化の方が自分に合っていると感じたため、ドイツでキャリアを続けることにしました。
留学中のサポートやコミュニティについて
マックスプランク研究所およびフンボルト財団に収入面および情報面でお世話になりました。マックスプランク研究所は留学生が多いため、サポートが充実しています。



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