[論文賞] 飯塚 崇/金沢大学
- UJA Award
- 17 時間前
- 読了時間: 4分
Takashi IIZUKA, Ph.D.
[分野:JRCC or NUJRA (シカゴ, イリノイ)]
論文リンク
論文タイトル
Therapeutic targeting of the tryptophan-kynurenine-aryl hydrocarbon receptor pathway with apigenin in MED12-mutant leiomyoma cells
掲載雑誌名
Cancer Gene Therapy
論文内容
子宮筋腫は女性に最も多い良性腫瘍で、MED12遺伝子変異が高率に認められる。この変異は、トリプトファンを代謝する酵素TDO2の異常発現を誘導することで、トリプトファンから生成されるキヌレニンを増やす。キヌレニンは細胞内受容体AHRを刺激し、腫瘍細胞の増殖や生存を促す。本研究では、自然由来のフラボノイドであるApigenin(パセリやカモミールに含まれる)が、この経路を抑制して筋腫細胞の増殖を抑えるかを調べた。
CRISPR技術でMED12変異を導入した平滑筋細胞および患者由来の筋腫細胞を用いた結果、Apigeninは変異型細胞に選択的に作用し、細胞の増殖を抑え、細胞周期を停止させ、アポトーシス(細胞死)を誘導した。また、ApigeninはTDO2の発現とキヌレニン産生を減少させ、AHR経路の活性化を阻止した。これらの作用は、炎症性サイトカイン(TNF、IL-1β)によって活性化されるNF-κBおよびJNK経路を抑えることで生じることが示された。以上より、Apigeninは安全で入手しやすい天然物質として、MED12変異をもつ子宮筋腫の新たな治療候補となることが示唆された。
受賞者のコメント
留学中に進めていた研究が、帰国後3年して形になってくれてうれしく思っています。留学中、帰国後も実験を手伝ってくれたり、追加実験をしてくれた同じポスドクの仲間や指導してくれた先生方に感謝いたします。
審査員コメント
平田 英周先生
MED12変異子宮筋腫において亢進するTDO2の発現とこれに伴うキヌレニンの増加、AHRの活性化に着目し、天然フラボノイドであるアピゲニンの治療応用可能性を示した研究です。アピゲニンがTDO2発現抑制とAHRとの機能競合を介してMED12変異細胞選択的に細胞周期の停止とアポトーシスを誘導することを示しており、今後新たな治療・予防戦略の開発に向けた展開が期待されます。
磯崎 英子先生
子宮筋腫に対する新規治療薬の開発において有効性の倫論的根拠を示した重要な報告です。今後の更なる発展を期待しています。
渡邉 潤先生
77%の子宮平滑筋肉腫が持つMED12変異を標的とした治療とした治療開発を目指した論文です。MED12変異により活性化したトリプトファン、キヌレイン代謝を標的として、天然化合物であるアピゲニンを使用することで治療効果があること、患者由来細胞株、遺伝工学的モデルを用いてメカニズムを示されています。これまで薬物療法がほとんどない子宮平滑筋肉腫の新規治療開発として今後の臨床応用が期待されます。
小田 紘嗣先生
この論文では、植物由来フラボノイドであるApigeninの子宮平滑筋腫に対する阻害効果とその機序を検討している。著者はMED12変異平滑筋種モデルに対するApigeninの効果を検討し、本疾患におけるこの化合物のProof-of-conceptを提示した。今後、Apigeninの化学構造の最適化、あるいは誘導体の開発により有効性を高め、Sub-micromolarレベルの阻害活性を達成することが期待される。
1)研究者を目指したきっかけ
基礎研究は地道で時間のかかる仕事ですが、公開されているデータを使うだけでなく、まだ誰も知らない新しい知見を一から生み出せることに大きな魅力を感じます。自分の発見が将来の医療の進歩につながる可能性があることも、研究をしたいと思った大きな理由です。
2)現在の専門分野に進んだ理由
子宮筋腫は良性腫瘍であり致命的な疾患ではない一方で、月経異常や疼痛、不妊などを通して女性の健康や生活の質に大きな影響を与えるため、この分野で新しい治療法を探る研究に取り組んでいます。患者さんの命だけでなく日常生活を支える医療につながる点、そしてまだ十分でない治療の選択肢を広げられる可能性に、この分野の大きな魅力を感じています。
3)この研究の将来性
この研究は、子宮筋腫が大きくなる仕組みを詳しく明らかにし、自然由来成分であるApihgeninを使った新しい治療法につながる可能性があります。将来、手術だけに頼らずに筋腫を抑える治療の選択肢が増え、女性の症状や生活の負担を軽くできることが期待されます。



![[論文賞] 近藤 泰介/慶應義塾大学](https://static.wixstatic.com/media/aa8fa1_934d13cc17044d91bc9d9f30f1f79b6e~mv2.jpeg/v1/fill/w_980,h_1038,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/aa8fa1_934d13cc17044d91bc9d9f30f1f79b6e~mv2.jpeg)
![[論文賞] 横井 健汰/産業技術総合研究所](https://static.wixstatic.com/media/aa8fa1_b858b8486e3a40e0a49ae9e9b87a97da~mv2.jpg/v1/fill/w_980,h_1171,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/aa8fa1_b858b8486e3a40e0a49ae9e9b87a97da~mv2.jpg)
![[論文賞] 藤本 征史/University of Toronto](https://static.wixstatic.com/media/aa8fa1_4935ea743aaf45599396461a0e691f50~mv2.jpg/v1/fill/w_867,h_866,al_c,q_85,enc_avif,quality_auto/aa8fa1_4935ea743aaf45599396461a0e691f50~mv2.jpg)
コメント