キャラクターIPを活用した学術雑誌創刊による科学広報
- UJA Award
- 6月5日
- 読了時間: 4分
木下 翔太郎 Shotaro Kinoshita, M.D., Ph.D.
学術雑誌:『地球・宇宙・未来』https://www.u-elsi.org/
応募者は、科学技術と社会の関係、先端技術のELSI(倫理的・法的・社会的課題:Ethical, Legal and Social Issues)に関心をもつ研究者であり、このような分野への社会的関心や市民参加が低いことに問題意識をもっていた。そうしたなかで、バンダイナムコグループの「ガンダムオープンイノベーション」(GOI)に採択され、ガンダムシリーズのもつリアルな科学技術描写や高い社会認知度を生かし、ELSIに関する市民参加型の議論を促進するプロジェクトを展開した。その活動の一環として、GOIで集まった研究者とともに、応募者は新たな学術雑誌『地球・宇宙・未来』(英名、「Globe, Universe, Next future, Discussions And Mentions)を創刊した。同雑誌は、科学コミュニティと社会の橋渡しを目的とし、専門家だけでなく一般市民や実務者も対象とするオープンアクセスの電子和文学術誌である。誰でも投稿・閲覧でき、実践報告や研究紹介など多様な形式を受け入れることで、幅広い層とのコミュニケーションを可能にしている。なお、本雑誌は、GOIからは独立しており、バンダイナムコから直接支援を受けていない自主的活動であるが、ガンダムIPのロゴを表紙に用いることが認められている。また、学際的なテーマや若手研究者、学術的なバックグラウンドや実践知をもちつつも既存の学術雑誌とマッチしなかった人々にも焦点をあてるなどして、既存の学術雑誌にはない発信の場を形成している。このようなタイトル・表紙・内容のユニークさから、学術コミュニティ以外の読者を多数獲得するとともに、アカデミストジャーナルなどのメディアでも取り上げられるなど(https://academist-cf.com/journal/?p=17232)、多方面から注目を集めている。また、応募者は、この雑誌の創刊までの一連の取り組みを、査読付き論考として英文学術雑誌にも発表しており(https://doi.org/10.6087/kcse.369)、日本独自の科学コミュニケーション活動としてアピールも行なっている。このように応募者は、学術と社会の新たな接点を創出する科学広報活動を、ユニークな学術雑誌の創刊という形で実践している。
受賞コメント
UJA科学広報賞にご選出いただき、誠にありがとうございます。
私は「ガンダムオープンイノベーション」というプロジェクトへの参加をきっかけに、学術雑誌を創刊いたしました。本誌は、オープンアクセスの和文学術雑誌という特長を活かし、学術と社会の垣根を低くすることを目標に運営しております。また、学際的なテーマや若手研究者に加え、学術的なバックグラウンドや実践知を持ちながらも、既存の学術雑誌では発表の機会に恵まれなかった方々にも光を当て、新たな発信の場となることを目指しています。掲載論文はすべてオープンアクセスとしてJ-STAGE上で公開しており、年2回刊行しております。現在、投稿も募集しておりますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。
受賞された広報活動に関して、伝えたいエピソード(苦労話、広報を始めたきっかけ、続けてきて良かったことなど)
電子学術雑誌を創刊し、J-STAGEへの登載を実現する上では 東京大学文学部の学部生・院生が創った学術雑誌『人文×社会』という前例、およびその組版チームの
現在の専門分野に進んだ理由
大学でAI医療機器の開発に携わる中で、科学技術と社会の関係、先端技術のELSI(倫理的・法的・社会的課題:Ethical, Legal and Social Issues)に関心をもつようになりました。
広報活動を行う理由
科学のELSIを考える上では、専門家以外の方々に議論に参加してもらうことが望ましいとされていますが、日本における社会的関心や市民参加が低いことに問題意識をもっていました。
審査員コメント
Ayane審査員
機動戦士ガンダムという国民的キャラクターIPを賢明に活用し、専門家と市民が対等に議論できる『場(雑誌)』をゼロから構築した独創性は本当に素晴らしいです。これは単なる広報に留まらず、その手法を論文として発信するなど、既存の科学広報の枠組みを大きく超える、極めて野心的なプロジェクトです。科学コミュニケーションのあり方を学術的にもアップデートしようとする姿勢は、次世代の広報モデルとして非常に優れています。
赤木審査員
ガンダムという国民的キャラクターを活用し、倫理的・法的・社会的課題というテーマを身近なものにした革新的な取り組みです。独自の学術雑誌という形式で、ロボット工学者、メディアアーティスト、アイドルなど多様な分野の執筆者を集め、従来の学術誌の枠を超えた学際的対話の場を創出しています。専門家と一般市民の距離を縮め、科学技術と社会の関係を考える新しいネットワークを生み出しています。バンダイナムコとの産学連携や日本科学未来館でのイベント展開など、多層的な科学コミュニケーションを実現している点が素晴らしいと思いました。







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